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その症状、本当に胸焼け?

患者さん、その症状はディスペプシア ですよ!ディスペプシアとは「心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とした腹部症状」で、以下のような症状を伴います。□腹痛または不快感□食後の胃もたれ□腹部膨満感□暖気、ゲップ□早期飽満感、早期満腹感 □食欲不振□悪心□嘔吐□胸やけ□呑酸(どんさん)、逆流感◆単なる“胸やけ”とは違う!ディスペプシア・上記の症状が4週間以上続きます・50歳以上で「体重減少」「黒色の便が出る」などの症状がある場合、胃がんの可能性も。その場合は胃カメラ(胃内視鏡検査)が必要です・胸やけは逆流性食道炎の症状です。ディスペプシアとは異なります出典:日本消化器病学会ガイドライン:機能性ディスペプシア(FD)監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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統合失調症、ムスカリン受容体作動薬KarXTは有効か?/Lancet

 xanomeline-trospium(KarXT)は統合失調症の陽性症状および陰性症状の改善に有効であり、概して忍容性は良好であった。米国・Karuna TherapeuticsのInder Kaul氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「EMERGENT-2試験」の結果を報告した。著者は、「今回の結果は、KarXTがD2ドパミン受容体遮断のメカニズムを有する現在のすべての抗精神病薬とは異なる、ムスカリン受容体の活性化に基づく有効かつ忍容性の高い、新たなクラスの抗精神病薬となる可能性を裏付けるものであった」とまとめている。KarXTは、現在承認されているすべての抗精神病薬とは異なり、D2ドパミン受容体を遮断しないムスカリンM1およびM4受容体選択的アゴニストであり、末梢性ムスカリン受容体に関連する有害事象を改善する目的で、xanomelineと末梢性ムスカリン性受容体拮抗薬であるtrospium chlorideを組み合わせたものである。統合失調症患者には新しいメカニズムを有する新たな治療法が緊急に必要とされていた。Lancet誌オンライン版2023年12月14日号掲載の報告。KarXTの有効性および安全性をプラセボと比較検証 研究グループは米国の22施設において、精神病が最近悪化して入院を必要としており、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコア80以上、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコア4以上の18~65歳の統合失調症患者を、KarXTまたはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 KarXT群では、最初の2日間はxanomeline 50mgとtrospium 20mgを、3~7日目にはxanomeline 100mgとtrospium 20mgを1日2回投与し、8日目からは用量変更可としてxanomeline 125mgおよびtrospium 30mgを1日2回に増量、あるいは忍容性に応じてxanomeline 100mgとtrospium 20mgに戻すことも可能とした。 主要エンドポイントは、5週時のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量とし、修正ITT集団(無作為化された患者のうち、少なくとも1回試験薬を服用し、ベースライン以外でPANSS評価を少なくとも1回受けた患者)を有効性解析対象集団とした。5週間でKarXTは陽性症状と陰性症状を有意に軽減 2020年12月16日~2022年4月13日に407例がスクリーニングを受け、適格基準を満たした252例がKarXT群(126例)またはプラセボ群(126例)に無作為化された。ベースラインのPANSS合計スコアは、それぞれ98.3、97.9であった。 PANSS合計スコアのベースラインから5週時の変化量の平均値は、KarXT群-21.2ポイント(SE 1.7)、プラセボ群-11.6ポイント(1.6)であった(最小二乗平均群間差:-9.6、95%信頼区間[CI]:-13.9~-5.2、p<0.0001、Cohen’s d効果量=0.61)。 副次エンドポイントもすべて、プラセボ群よりKarXT群で有意に良好であった(p<0.05)。 主な有害事象(KarXT群vs.プラセボ群)は、便秘(27例[21%]vs.13例[10%])、消化不良(24例[19%]vs.10例[8%])、頭痛(17例[14%]vs.15例[12%])、悪心(24例[19%]vs.7例[6%])、嘔吐(18例[14%]vs.1例[1%])、高血圧(12例[10%]vs.1例[1%])、浮動性めまい(11例[9%]vs.4例[3%])、胃食道逆流症(8例[6%]vs.0[0%])、下痢(7例[6%]vs.4例[3%])であった。 治療中に発現した有害事象は、錐体外路症状(KarXT群0[0%]vs.プラセボ群0[0%])、アカシジア(1例[1%]vs.1例[1%])、体重増加(0[0%]vs.1例[1%])、傾眠(6例[5%]vs.5例[4%])であり、投与中止に至った有害事象(9例[7%]vs.7例[6%])と同様に、KarXT群とプラセボ群で同程度であった。 なお、同一のEMERGENT-3試験、52週間の非盲検試験であるEMERGENT-4およびEMERGENT-5試験を含む追加の試験により、統合失調症患者におけるKarXTの有効性および安全性に関する追加情報が提供される予定だという。

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NHK「やさしい日本語」【英語が話せないのは日本語が難しいから???実は「語学障害」だったの!?(文化結合症候群)】Part 3

なんで日本人はなかなかバイリンガルになれないの?バイリンガルになるためには、言語能力(生活言語能力)の予備能と学習言語能力を流用していることがわかりました。それにしても、なぜ外国の人と比べて、日本人はなかなかバイリンガルになれないのでしょうか? 冒頭では、もともと外国語の習得に困難がある状態を「語学障害」と名付けました。これは、日本の国民病(文化結合症候群)とも言えます。文化結合症候群とは、ある文化と強く結び付いて出てくる精神障害です。たとえば、日本人ならではの「対人恐怖」(社交不安症)が挙げられます。昨今の精神障害は発達障害も含むことから、語学力の発達の困難さとしての「語学障害」は、文化結合症候群に含まれると考えることができます。それでは、ここから、この「語学障害」の原因を主に3つに分けて説明しましょう。(1)モノリンガルにとらわれている前回、生活言語能力の予備能が約40%あることを推定しました。しかし、これは、スペイン語が母語である場合においての話です。スペイン語は、英語と並んで生活言語の語彙が少なく、格変化も少ないなど文法も単純で、比較的に習得が簡単な言語です。一方、日本語は、「私」「おれ」「ぼく」など1人称のバリエーションの数の多さからもわかるように、生活言語の語彙が世界的に見てもずば抜けて多いです。また、他の言語にあまり見られない尊敬語・謙譲語・丁寧語、擬音語・擬態語、助数詞なども含めると、膨大になります。「語学障害」に陥る1つ目の原因は、日本語(母語)に予備能をすでにかなり使ってしまっている、つまりモノリンガル(単一の話し言葉)にとらわれていることです。実際に、生活言語の習得は、世界的にはおおむね8歳ですが、日本語については遅れて10歳までかかると指摘されています。その分、必然的に、英語(第2言語)に使える予備能が減ってしまいます。この状況をたとえるなら、スペイン語は胃にやさしい料理であるのに対して、日本語という料理はかなり癖があり消化酵素を余分に使う(予備能を使う)必要があり、その分、次の英語という料理で消化不良を起こしやすいというわけです。ちなみに、この予備能は、母語と第2言語の組み合わせ(言語の距離)によっても変わってきます。先ほどのスペイン語とスウェーデン語に加えて英語は同じ言語圏(インド・ヨーロッパ語族)として、発音、語彙、文法が似ており、言語の距離が近いです。一方、日本語とこれらの言語は発音、語彙、文法がまったく違い、言語の距離がかなり遠いです。その分、日本人が英語を習得する場合、必然的に予備能をより多く使わざるを得なくなります。逆に、日本語と言語の距離が近い韓国語は、予備能を多く使わなくて済みます。この状況をたとえるなら、スペイン語とスウェーデン語(または英語)、日本語と韓国語は食べ合わせが良く(言語距離が近く)、一緒に消化しやすいのに対して、日本語と英語は食べ合わせが悪く(言語距離が遠く)、やはり一緒では消化不良を起こしやすいというわけです。(2)モノリテラルにもとらわれている英語のアルファベットが26文字であるように、多くの言語で文字の種類は限られています。一方で、漢字はかなりの数がありますが、本家の中国では簡略化された漢字表記が広まっています。韓国では漢字自体をすでに廃止しています。一方、日本語では、ひらがなとカタカナのそれぞれ46文字に加え、常用漢字は約2,000文字で、簡略化はほとんどされていません。さらに、たとえば「生」の漢字の読み方のバリエーションの数の多さからもわかるように、漢字の読み方の違いも含めると、やはり膨大です。「語学障害」に陥る2つ目の原因は、日本語(母語)の書き言葉に学習言語能力をかなり使ってしまっている、つまりモノリテラル(単一の書き言葉)にもとらわれていることです。その分、必然的に英語(第2言語)に使う学習言語能力の時間や労力が減ってしまいます。(3)モノカルチュラルにもとらわれている世界のほとんどの国で、語学を学習する目的は、その言語を使って生活したり仕事をすることです。一方、日本人は英語を学習してもそれを生活や仕事に生かす人は限られています。欧米への憧れはありますが、実際に海外に出ていく人は少なく、異文化に入っていくことに消極的です。また、移民の受け入れは極めて少なく、異文化を受け入れることにもかなり消極的です。基本的に私たちは日本人だけで固まることに居心地の良さを感じています。「語学障害」に陥る3つ目の原因は、日本文化(母国文化)から抜けきれない、つまりモノカルチュラル(単一の文化)にもとらわれていることです。その分、必然的に英語を異文化として理解しようとする気持ちが弱まってしまいます。実際に、私たちは英語を長年勉強していることになっているのですが、その実体は日本文化によって色濃くアレンジされた受験英語です。これは、英文を読んで日本語で書く設問と日本語の文章を読んで英文を書く設問がほとんどです。逆に、英語を聞いて英語で話す、または英文を読んで英文で書く設問がまず見当たりません。点数化して優劣を付けやすいからこのような設問ばかり出題せざるを得なかったという事情もあるでしょうが、これでは英語の全般的な語学力を測っているのではなく、単に翻訳に限定した日本語の能力を測っていることになります。教育論者の中には、日本語の表現力を高めるために、むしろこれが望ましいと主張する人もいます2)。確かに一理あります。しかし、だとしたら最も効率的なのは、英語ではなく国語の勉強に専念することです。つまり、英語によって日本語の能力を高めると主張すること自体、モノカルチュラルにとらわれていることがわかります。この点で、日本の英語教師の多くが英語を流暢に話せないのも納得がいきます。彼らの実体は翻訳の教師であり、英会話の教師ではないのです。この状況は、海外の人からはとても驚かれます。日本語の読み書きはできるけど会話はできない自称「日本語教師」に日本語を教えてもらいたいと外国の人は思わないのは容易に想像できるでしょう。逆に言えば、英語を流暢に話せない英語教師が大多数だからこそ、生徒に英語の全般的な語学力を高めるという教育方針を打ち立てられないとも言えるでしょう。なお、モノカルチュラルにとらわれていることは、異文化による文化の淘汰圧がかからず、外国語による言語の淘汰圧もかかりにくくなります。そのため、結果的には日本語の話し言葉も書き言葉も、よく言えば多様で豊かなまま、悪く言えば中国語や韓国語のように洗練されずに難解なままになってしまっているというわけです。このようにして、モノリンガルやモノリテラルにとらわれるという悪循環が起きているのです。なお、そもそも日本人がモノカルチュラルにとらわれている原因は、不安を感じやすく受け身になりやすいという独特のメンタリティが考えられます。この起源の詳細は、関連記事5でご覧ください。1)英語学習は早いほど良いのかP101、P116:バトラー後藤裕子、岩波新書、20152)その「英語」が子どもをダメにするP69:榎本博明、青春出版社、2017<< 前のページへ■関連記事海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 1NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 1映画「スプリット」(続編)【なんで記憶喪失になっても一般常識は忘れないの?なんで多重人格になっても人格が入り交じることはないの?(記憶機能)】Part 1苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 3

なんでダブルリミテッドバイリンガルになるの?それでは、なぜダブルリミテッドバイリンガルになるのでしょうか? 現時点で、ダブルリミテッドバイリンガルに関する個別のケースは、国際結婚で生まれた子供でよく見かけますが、大規模な調査研究は見当たりません。ただ、語学力を含む言語能力の本質を捉えると、やはりその原因は、もともとその子の言語能力が高くない場合です。この言語能力を、知能検査(WPPSI-IIIやWISC-V)における言語理解IQ(VCI)から、2つの場合に分けて考えてみましょう。(1)言語能力がとても低い場合1つ目は、言語能力がとても低い場合です。この目安は、言語理解IQが85以下です。このような子供は、統計上約15%います。彼らのほとんどが日本語だけの学習でも問題を抱えています。この状況で、英語の学習を掛け持ちすると、ほぼ確実にダブルリミテッドバイリンガルになるのは容易に想像できるでしょう。先ほどの胃の栄養吸収に例えるなら、消化酵素の量が少ない(もともとの言語能力が低い)ため、メインディッシュが1つ(日本語だけ)でも消化不良を起こしているのに、メインディッシュが2つ(日本語と英語の両方)になることで、2つともますます吸収できなくなってしまうというわけです。なお、もともと全般的な知的能力は保たれている(トータルIQ[FSIQ]は低くない)のに、母語の語彙が少なく文法がおかしい(言語理解IQが極端に低い)場合は、言語障害(言語症)と診断します。また、もともと母語の滑舌が悪い(発音がうまくできない)場合は、語音障害(語音症)と診断します。そして、これらには言語療法のトレーニングが行われます。このように、言語能力には個人差があることも受け止める必要があります。(2)言語能力が高くはない場合2つ目は、言語能力が高くはない場合です。この目安は、言語理解IQが85~100です。このような子供は、統計上約35%います。彼らは、一見、日本語の学習に問題はなさそうです。しかし、言語能力としては平均以下ですので、余力があるとは言えません。この状況で、英語の学習を掛け持ちすると、単純に発音・語彙・文法が2倍になるわけですから、生活言語能力を習得する時期が遅れます。その分、学習言語能力が始まる時期が遅れ、十分な学習言語が習得できなくなる恐れがあることも想像できるでしょう。さらにこの状況は、ダブルリミテッドバイリンガルだけでなく、学習障害も引き起こすリスクがあります。これは、発音の敏感期が遅れて終わる子供はその分、その後の語彙の学習が遅れるという、先ほど紹介した現象に通じます。ちなみに、この言葉の学習の量(生活言語能力)と質(学習言語能力)のトレードオフの関係は、絶対音感を身に付けると相対音感が損なわれるという音感のトレードオフにも通じます。この詳細については、関連記事2をご覧ください。先ほどの胃の栄養吸収に例えるなら、消化酵素の量が多くない(もともとの言語能力が高くない)ため、メインディッシュが1つ(日本語だけ)でようやく消化しているのに、メインディッシュが2つ(日本語と英語の両方)になることで、2つとも吸収できなくなってしまうというわけです。私たちは、「子供は語学の天才である」などと根拠のない語学ビジネスの宣伝に振り回されず、この事実をもっと深刻に受け止める必要があります。もちろん、子供のためによかれと思ってという親心や憧れはよくわかります。また、国際結婚で生まれた子供の言語環境がどうしても多言語になってしまう状況は致し方ないです。しかし、子供のもともとの言語能力を見極められない幼少期から、モノリンガルの日本人の両親が日本国内で英語教育をあえて本格的にやろうとするのは、時間とお金と労力がかかるばかりでなく、子供をダブルリミテッドバイリンガルという言語障害にさせてしまう危うさもあるというわけです。これが、子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」なのです。1)英語学習は早いほど良いのかP71、P34、P140:バトラー後藤裕子、岩波新書、2015<< 前のページへ■関連記事NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(後編)【言葉は噂をするために生まれたの!?(統語機能)】NHK「おかあさんといっしょ」(後編)【絶対音感よりも○○!?才能よりも○○!?(幼児教育)】Part 1

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inaxaplin、APOL1バリアント保有患者で蛋白尿を抑制/NEJM

 アポリポ蛋白L1をコードする遺伝子(APOL1)の毒性機能獲得型バリアント(G1またはG2)を持つ人は、蛋白尿性慢性腎臓病(CKD)のリスクが高く、CKD患者はこれら2種のバリアントを持たない人に比べ末期腎臓病への進展が加速化することが知られている。米国・Vertex PharmaceuticalsのOgo Egbuna氏らは、VX19-147-101試験において、2種のAPOL1バリアントを有する巣状分節性糸球体硬化症の患者では、低分子量の経口APOL1チャネル機能阻害薬inaxaplinの投与により蛋白尿が減少することを示した。研究の成果は、NEJM誌2023年3月16日号に掲載された。前臨床研究と3ヵ国での第IIa相試験 研究グループは、前臨床研究としてinaxaplinのAPOL1チャネル機能阻害能の評価を行い、次いでフランス、英国、米国の12施設で非盲検単群第IIa相試験(VX19-147-101試験)を実施した(Vertex Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 前臨床研究では、テトラサイクリン誘導性APOL1ヒト胎児由来腎臓(HEK293)細胞でinaxaplinのAPOL1チャネル機能阻害能を評価し、APOL1 G2相同遺伝子組み換え蛋白尿性腎臓病モデルマウスを用いて蛋白尿に対するinaxaplinの効果の評価を行った。 第IIa相試験では、患者登録が2020年9月に開始され2021年8月に完了した。対象は、年齢18~65歳、2種のAPOL1バリアントを持ち、生検で巣状分節性糸球体硬化症が確認され、蛋白尿(尿蛋白/クレアチニン比[g/gCr]≧0.7~<10、かつ推算糸球体濾過量≧27mL/分/1.73m2体表面積)を有する患者であった。 被験者は、標準治療に加え、inaxaplin(1日1回、13週間[15mgを2週間、45mgを11週間])の経口投与を受けた。 主要アウトカムは、inaxaplinの服薬アドヒアランス率が80%以上の患者における、尿蛋白/クレアチニン比の、ベースラインから13週時までの変化の割合であった。安全性も良好 in vitroおよびin vivoの研究では、inaxaplinはAPOL1蛋白に直接結合して濃度依存性にAPOL1チャネル機能を阻害し、APOL1を介した腎臓病のモデルマウスにおいて蛋白尿を減少させることが示された。 第IIa相試験には16例(平均[±SD]年齢38.8±14.5歳、女性9例[56%])が登録された。inaxaplinのアドヒアランス率の閾値を満たした13例の尿蛋白/クレアチニン比の平均値は、ベースラインの2.21±0.95から13週時には1.27±0.73へと低下し、変化率の幾何平均は-47.6%(95%信頼区間[CI]:-60.0~-31.3)であった。蛋白尿の減少は早期にみられ、13週の投与期間を通じて持続的に減少した。 inaxaplinの服薬アドヒアランス率を問わない全患者の解析では、1例を除く全例で主解析と同程度の低下(幾何平均変化率:-44.0%、95%CI:-56.3~-28.3)が認められた。 inaxaplinの投与を1回以上受けた16例のうち15例(94%)で少なくとも1件の有害事象が発現したが、いずれも軽度~中等度であり、有害事象による投与中止例はなかった。少なくとも3例で発生した有害事象は、頭痛(4例)、背部痛(3例)、吐き気(3例)であった。担当医によってinaxaplin関連の可能性があると判断された有害事象は3例(頭痛2例、頭痛・腹部膨満・消化不良・背部痛1例)で認められた。 著者は、「この第IIa相試験において、APOL1機能の阻害を標的とする治療が、APOL1蛋白の毒性機能獲得型バリアントによって引き起こされる腎臓病の進行に関連する糸球体損傷のマーカーである蛋白尿を減少させるという、初めてのエビデンスが得られた」としている。

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世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注アテオス」【下平博士のDIノート】第111回

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注アテオス」今回は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド注射液(商品名:マンジャロ皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、GIPとGLP-1の2つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬であり、選択的かつ長時間にわたる血糖値の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgを4週間皮下投与した後、維持用量である週1回5mgに増量します。患者の状態に応じて適宜増減し、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔を空けて2.5mgずつ増量することができます。最大用量は週1回15mgです。<安全性>日本人および外国人2型糖尿病患者を対象とした国際共同第III相試験、日本人2型糖尿病患者を対象とした国内第III相試験の本剤5mg投与群において、副作用は544例中232例(42.6%)で報告されています。主なものは、悪心60例(11.0%)、下痢48例(8.8%)、食欲減退46例(8.5%)、便秘44例(8.1%)などでした。なお、重大な副作用として、低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、GIP/GLP-1受容体作動薬と呼ばれる2型糖尿病の治療薬です。血糖値が高くなるとインスリンの分泌を促進し、またインスリンを効きやすくすることで血糖値を下げます。2.週1回、同じ曜日に投与してください。オートインジェクター型注入器は1回使い切りです。3.めまいやふらつき、動悸、冷や汗などの低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転など危険を伴う作業を行う際は注意してください。これらの症状が認められた場合は、ただちに糖質を含む食品を摂取してください。4.悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退が強い場合はご相談ください。5.嘔吐を伴う激しい腹痛が現れた場合は使用を中止し、速やかに受診してください。6.冷蔵庫内などで光が当たらないように保管してください。凍結は避けて、もし凍結した場合は使用しないでください。室温で保管する場合は、外箱から出さずに保管し、21日以内に使用してください。30℃を超える場所では保管しないでください。<Shimo's eyes>本剤は、39個のアミノ酸を含む合成ペプチドであり、単一分子でグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体およびグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の双方に作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。GIPとGLP-1はいずれも食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、血糖が高い場合には膵臓におけるインスリン分泌を促進するとともに、食欲減退や満腹感亢進による体重増加の抑制作用が期待されています。なお、米国では2022年5月に「成人2型糖尿病治療における血糖コントロール改善のための食事および運動療法の補助療法」として承認を取得しているので、わが国よりも早期のステージでの使用が想定されます。注入器のアテオスは、既存のトルリシティにも使用されているオートインジェクターで、1回使い切りのキットです。注射針付きのシリンジがあらかじめ装填されており、空打ちをすることなく、ボタンを押すだけで自動的に投与することができます。医療機関において、適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんやご家族は本剤の自己注射が可能です。国内の実薬対照二重盲検比較試験(SURPASS J-mono試験)では、主要評価項目であるHbA1cのベースラインから投与52週時までの平均変化量について、デュラグルチド0.75mg(商品名:トルリシティ)に対する本剤5mg、10mg、15mgの優越性が認められました。また、非盲検長期安全性試験(SURPASS J-combo試験)では、本剤5mg、10mg、15mgを経口血糖降下薬単剤と併用し、安全性および有効性が確認されました。主な副作用として、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退などの消化器症状が報告されており、投与開始時の用量の漸増は、胃腸障害リスクの回避・軽減を目的としています。用量依存的な体重減少も認められているため、過度の体重減少にも注意する必要があります。投与開始時のBody Mass Index(BMI)が23kg/m2未満の患者での有効性および安全性は検討されていません。なお、本剤とDPP-4阻害薬はいずれもGLP-1受容体およびGIP受容体を介した血糖降下作用を有しています。両剤を併用した際の臨床試験成績はないため、併用処方の場合には疑義照会が必要です。

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片頭痛と胃腸疾患との関係

 片頭痛は世界中に蔓延している疾患であり、最近の研究によると、胃腸疾患患者において片頭痛の発症率が増加しているとされている。また、前臨床でのエビデンスでは、消化管神経系と脳腸軸などの中枢神経系との双方向性の関係が示唆されている。韓国・同徳女子大学校のJemin Kim氏らは、主要な胃腸疾患と片頭痛との関連を明らかにするため、検討を行った。その結果、胃腸疾患と片頭痛との間に統計学的に有意な関連が認められ、この関連は胃腸疾患の数が多い患者や、片頭痛の予防と急性期治療の両方で片頭痛治療薬を使用している患者において、強い相関が認められることが報告された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2022年3月28日号の報告。片頭痛の有病率、消化不良など複数の胃腸疾患を有する患者で3.5倍 対象は、片頭痛または胃腸疾患の診断が年に2回以上認められた患者。胃腸疾患には、消化性潰瘍、消化不良、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、胃食道疾患を含めた。 主要な胃腸疾患と片頭痛との関連を明らかにするために行った調査の主な結果は以下のとおり。・HIRAデータセットより、78万1,115例が研究に含まれた。・片頭痛の有病率は、年齢、性別、保険の種類で調整した後、複数の胃腸疾患を有する患者において、約3.5倍高かった(調整オッズ比:3.46、95%CI:3.30~3.63、p<0.001)。・胃腸疾患の数が増加するほど、片頭痛の有病率も高かった。・胃腸疾患の有病率は、急性予防または急性治療のいずれかの患者と比較し、予防と急性期治療の両方のために片頭痛治療薬を使用していた患者のほうが高かった。

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新しい作用機序で心血管イベントを抑制するHFrEF治療薬「ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第86回

新しい作用機序で心血管イベントを抑制するHFrEF治療薬「ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg」今回は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬「ベルイシグアト(商品名:ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg、製造販売元:バイエル薬品)」を紹介します。本剤は、標準治療を受けている左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者に対して、新しい作用機序で心血管イベントリスクを低減させることが期待されています。<効能・効果>本剤は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2021年6月23日に承認され、9月15日に発売されました。なお、左室駆出率の保たれた慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していません。<用法・用量>通常、成人にはベルイシグアトとして、1回2.5mgを1日1回食後経口投与から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mgおよび10mgに段階的に増量します。なお、血圧など患者の状態に応じて適宜減量します。<安全性>国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)において、副作用は本剤投与群2,519例中367例(14.6%)で報告されました。主な副作用は、低血圧172例(6.8%)、浮動性めまい37例(1.5%)、悪心19例(0.8%)、起立性低血圧、消化不良各14例(0.6%)、疲労11例(0.4%)、頭痛10例(0.4%)などでした。なお、重大な副作用として、低血圧(7.4%)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は心臓や血管の機能を調節し、慢性心不全が悪くなるのを抑えます。2.血管を拡張させる作用によって、めまい・ふらつきが現れることがあります。高い所での作業、自動車の運転や機械の操作には注意してください。3.(女性に対して)本剤を服用中および服用終了後一定期間は確実な方法で避妊してください。妊娠を希望する場合は医師に伝え、今後の方針について相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、慢性心不全の適応で承認された初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬です。既存のsGC刺激薬としてはリオシグアト(商品名:アデムパス)が肺動脈性肺高血圧症などの適応で承認されています。慢性心不全の病態では、内皮細胞機能不全による一酸化窒素(NO)産生の低下やsGCの機能不全により、cGMPシグナルの低下が引き起こり、その結果として心筋および血管の機能不全の一因、さらには心不全の悪化に寄与していると考えられます。本剤は、NO受容体であるsGCを直接刺激する作用と、内因性NOに対するsGCの感受性を高める作用の2つの機序により、心血管系の重要なシグナル伝達経路であるNO-sGC-cGMP経路を活性化して、慢性心不全の進行を抑制します。日本人を含む国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)では、慢性心不全の標準的な治療を受けているHFrEF患者に対して本剤またはプラセボが投与されました。前治療として、β遮断薬、ACE阻害薬またはARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の3剤併用療法を受けていた患者が59.7%を占めていました。その結果、本剤群では、心血管死または心不全による初回入院の複合エンドポイント発現の相対リスクが10%減少しました(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.82~0.98)。本剤と既存のsGC刺激薬であるリオシグアトは、降圧作用を増強する恐れがあるため併用禁忌であり、シルデナフィルを含むPDE5阻害薬、一硝酸イソソルビドなどの硝酸剤およびNO供与剤も同様の理由から併用注意となっています。なお、本剤投与前の収縮期血圧が100mmHg未満の患者では過度の血圧低下が起こる恐れがあるため血圧の確認も必要です。近年、HFrEFに対する新しい治療薬として、HCNチャネル阻害薬のイバブラジン(商品名:コララン)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のサクビトリルバルサルタン(同:エンレスト)、SGLT2阻害薬のダパグリフロジン(同:フォシーガ)などが使用できるようになりました。本剤は既存の治療薬とは異なる作用機序であり、標準治療が効果不十分な患者であっても心血管イベントリスクが低減する可能性があります。参考1)PMDA 添付文書 ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg

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その胸やけ症状、本当に胸焼け?【Dr.山中の攻める!問診3step】第2回

第2回 その胸やけ症状、本当に胸焼け?―Key Point―悪性腫瘍を疑う症状や所見(red flag sign)がないか確認機能性ディスペプシアの診断基準を満たすか検討ピロリ検査が陽性なら除菌。陰性ならプロトンポンプ阻害薬を処方する同僚医師から30代前半の女性の診察を頼まれました。食後の胃もたれと軽い嘔気が1年以上続いているようです。胃カメラでは異常がなく、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症もありません。プロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方しましたが、あまり効果がありません。「機能性ディスペプシア」と思われました。原因がわからないまま症状が続くことが、とても辛かったようです。2週間に一度、外来に来ていただき訴えに共感しながら傾聴するよう心がけました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。◆今回おさえておくべき症状はコチラ!【悪性腫瘍を疑うred flag sign】予期せぬ体重減少、嚥下障害、吐気/嘔吐、黒色便、貧血、血小板増多、胃がんの家族歴、治療に反応しないディスペプシア。日本では胃がんの発生が多いので、症状がなくても1~2年に1度の胃カメラが薦められている。【STEP1】患者の症状に関する勘違いを修正しよう!患者が症状を勘違いしていること、よくありますよね。【STEP2】ディスペプシアを起こす原因を探る1)逆流性食道炎消化性潰瘍ヘリコバクター・ピロリ菌感染症胃がん胃不全麻痺セリアック病クローン病膵炎膵がん胆石心筋梗塞糖尿病副腎不全など原因がわからないものを機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)と呼ぶ薬剤内服歴を確認することが重要。とくにNSAIDs、アスピリン、鉄剤、抗菌薬、レボドパ、ピル、ビスフォスフォネート製剤はよくディスペプシアを起こす胃カメラで見つかる疾患の頻度1)>70%は異常なし → 機能性ディスペプシア<10%は消化性潰瘍<1%が上部消化管悪性腫瘍【機能性ディスペプシア の診断基準 RomeIV】下記のいずれかの症状が6ヵ月以上前からあり、最近3ヵ月持続しているつらいと感じる食後のもたれ感つらいと感じる摂食早期の飽満感つらいと感じる心窩部痛つらいと感じる心窩部灼熱感かつ、症状を説明しうる器質的疾患はない。食後愁訴症候群(PDS:postprandial distress syndrome)と心窩部痛症候群 (EPS:epigastric pain syndrome)に分類される機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群はよく合併する2)【STEP3】治療とその注意点をおさえる2)red flag signがなければ、胃カメラは行わずピロリ菌検査を行う。陽性だったら除菌する。陰性だったらPPI(プロトンポンプ阻害薬)を4~8週間投与する。無効なら少量の三環系抗うつ薬を考慮する日本人の60歳以上では、50%以上はヘリコバクター・ピロリに感染しているピロリ菌感染症は消化性潰瘍、胃がん、胃リンパ腫と関係がある。PPIの機能性ディスペプシアに対するNNT(number needed to treat、治療必要数)は133)であるPPIの副作用4)で最も多いのは下痢と頭痛。 PPIの種類を変えると下痢は良くなることがある。このほか、市中肺炎、急性の腸管感染症、Clostridium difficile感染症、急性間質性腎炎、顕微鏡的大腸炎、骨粗鬆症、ビタミンB12欠乏症を増加させるので注意。ビスフォスフォネート製剤はよくディスペプシアを起こすばかりか、食道潰瘍や胃潰瘍も起こすので要注意。もし、ビスフォスフォネート製剤を飲んでいるならば中止する禁煙やアルコールの減量を薦める消化管運動機能改善薬であるアコチアミドも臨床試験で有効性が示されている漢方では六君子湯や半夏厚朴湯が効果ありと言われている<参考文献・資料>1)Talley NL, et al. N Engl J Med.2015;373:1853-1863.2)Goldman L, et al. Goldman-Cecil Medicine. 2020;856-8573)Pinto-Sanchez MI, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 21;11:CD011194.4)上田剛士著. 日常診療に潜む クスリのリスク.医学書院.p93-99. 2017.日本消化器学会編.機能性消化管疾患診療ガイドライン.2014―機能性ディスペプシア(FD)

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マスク着用時の口臭対策の基本とは?専門家がアドバイス

 新型コロナウイルス感染症流行の長期化に伴い、マスクを着けることが日常化している。マスク装着時に気になるのが自分の口臭の問題だ。乳酸菌食品メーカーであるオハヨーバイオテクノロジーズは「マスクの中の“臭い”気になりませんか?」と題したプレス資料の中で、口臭の原因と対策について解説している。マスク装着時の口臭対策は着用直前の口腔ケア 口臭の原因は、大きく分けて2つ。1つ目は「体」に原因がある場合で、消化不良や肝機能低下、糖尿病などが考えられる。2つ目は「口の中」に原因がある場合で、歯や舌の汚れや虫歯、歯周病などが要因となる。口臭のうち8割以上が口の中に原因があるとされ、とくに舌の上が白くなる舌苔の増加と歯周病菌による歯茎の炎症やメチルメルカプタンの発生による口臭が代表的な要因だ。 オハヨーバイオテクノロジーズの研究に協力する歯科医・日本大学客員教授の若林 健史氏は、「マスクの装着が常態化したことによって通常時よりも話す機会・時間が少なくなると口周りの動きが減る。それによって唾液の分泌が減少し、口内の循環が減ることで、悪玉菌が留まりやすくなって口内環境が悪化しやすくなる。マスクをしながらの会話は口呼吸になりやすいので口内に乾燥が起こることも考えられる」と述べる。 マスク着用時の口臭対策としては、「マスクを着用する直前に口腔ケアを徹底することが効果的。とくに舌苔を取り除き、増殖を抑制することが大切になる。舌ブラシで舌をきれいにし、歯ブラシ、歯間ブラシでブラッシングを徹底、さらに洗口液でうがいを行うとよい」(若林氏)。加えて、マスク着用の直前に匂いのきついものを食べないようにする、口内環境を整える良質な乳酸菌を食品などから摂り入れることも手軽にできるマスク着用時の口臭対策という。 医療者として、受診患者や入院患者の口臭に気づいた場合はどうすればよいか。「院内や関係医療機関の歯科衛生士を紹介して欲しい。入れ歯をしている方であれば、入れ歯の手入れを食事のすぐあとに徹底して行うことが効果的。口臭は原因によって対処方法が異なるので、専門家に相談することを薦めていただきたい」と若林氏はアドバイスする。 口臭対策品の広告等において、「日本人は欧米人に比べて口臭を持つ人が多い」とされることがあるが、「日本人の歯周疾患の保有率は上昇しているが1)、他国と比べて有意に多いというデータはない」(若林氏)という。多くの場合、口臭の原因は口内にあるため、ブレスケア製品でごまかすのではなく、しっかりとした歯磨きと舌ブラシでのケアがマスク着用時の口臭対策の基本になるという。

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1日1回で空腹時血糖と食後血糖の両方を改善する「ソリクア配合注ソロスター」【下平博士のDIノート】第57回

1日1回で空腹時血糖と食後血糖の両方を改善する「ソリクア配合注ソロスター」今回は、持効型溶解インスリンアナログ製剤/GLP-1受容体作動薬「インスリン グラルギン/リキシセナチド配合製剤(商品名:ソリクア配合注ソロスター、製造販売元:サノフィ)」を紹介します。本剤は、1日1回の投与で空腹時血糖と食後血糖を同時に改善することで、より良い血糖コントロールを得ることが期待されています。<効能・効果>本剤は、インスリン療法が適応となる2型糖尿病の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年6月8日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には、5~20ドーズ(インスリン グラルギン/リキシセナチドとして5~20単位/5~20μg)を1日1回朝食前に皮下注射します。1日1回5~10ドーズから開始し、患者の状態に応じて増減できますが、1日20ドーズを超えることはできません。<安全性>日本人2型糖尿病患者を対象に実施された国内第III相試験では、主な副作用として、悪心(5%以上)、腹部不快感、下痢、嘔吐、消化不良、便秘、胃腸炎、食欲不振、めまい、振戦、注射部位反応(内出血、紅斑、浮腫、そう痒など)、疲労(いずれも1~5%未満)、腹部膨満、腹痛、多汗症、傾眠、倦怠感、空腹感(いずれも1%未満)が認められています(承認時)。なお、重大な副作用として、低血糖、急性膵炎、ショック、アナフィラキシーが発現する恐れがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬には、空腹時血糖を調節する成分と、食後血糖を調節する成分の2種類が配合されていて、1日1回の注射で血糖コントロールを改善します。2.めまいやふらつき、動悸、冷や汗などの低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転など危険を伴う作業を行う際は注意してください。これらの症状が認められた場合は、ただちに糖質を含む食品を摂取してください。3.嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛が現れた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けてください。4.未使用の薬剤は冷蔵庫内に保管してください。凍結すると使用できなくなるので、直接冷気に触れないように注意してください。なお、旅行などに出掛ける場合、短期間であれば室温に置いても差し支えありません。5.使用開始後は冷蔵庫に入れず、キャップをしっかり閉めて涼しいところに保管してください。直射日光の当たるところや自動車内などの高温になる恐れのあるところには置かないでください。6.使用開始後31日を超えたものは使用しないでください。<Shimo's eyes>本剤は、持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の配合皮下注射製剤で、インスリン デグルデク/リラグルチド(商品名:ゾルトファイ配合注フレックスタッチ)に次ぐ国内2剤目の薬剤です。インスリン グラルギン(同:ランタス)とリキシセナチド(同:リキスミア)が日本独自の配合比である1単位:1μgで配合されていて、デバイスにはプレフィルドペン型注入器「ソロスター」が採用されています。主に空腹時の血糖コントロールを改善する持効型インスリン製剤も、主に食後の血糖コントロールを改善するGLP-1受容体作動薬も国内外で広く使われていますが、持効型インスリン製剤は低血糖および体重増加に注意が必要で、GLP-1受容体作動薬は胃腸障害に注意が必要です。本剤は、国内第III相試験で、空腹時血糖と食後血糖のいずれも改善し、インスリン グラルギン単剤と比較して、低血糖と体重増加のリスクを増やさずに統計学的に有意なHbA1cの低下を示しました。また、安全性に関しても、各配合成分の既知の安全性プロファイルと同等であることが確認され、リキシセナチドと比較して、胃腸障害の副作用リスクを低減しました。持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬を組み合わせた治療法は「BPT(Basal supported post Prandial GLP-1 Therapy)」と呼ばれています。本剤を用いることで、経口糖尿病薬が効果不十分で新しく注射薬を導入する場合や、ほかの注射薬から切り替える場合などに、1日1回の投与でBPTが可能となります。なお、DPP-4阻害薬はGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有するため、本剤と併用する場合は疑義照会が必要です。参考1)PMDA 添付文書 ソリクア配合注ソロスター

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胃がん家族歴ありH.pylori感染者、除菌でリスク低下/NEJM

 第1度近親者に胃がんの家族歴があるHelicobacter pylori感染者では、H. pyloriの除菌治療によって胃がんのリスクが低下することが、韓国・国立がんセンターのIl Ju Choi氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年1月30日号に掲載された。H. pylori感染と胃がんの家族歴は、胃がんの主要なリスク因子とされる。第1度近親者に胃がん罹患者がいるH. pylori感染者の胃がんリスクが、H. pylori除菌治療で低下するかは明らかではなかった。除菌治療の有無で胃がん発生を比較する単一施設の無作為化試験 本研究は、韓国の単一施設(国立がんセンター、高陽市)で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2004年11月~2011年12月の期間に患者登録が行われた(韓国・国立がんセンターの助成による)。 対象は、年齢40~65歳、第1度近親者に1人以上の胃がん患者がいるH. pylori感染者であった。胃がんや他臓器のがんの既往歴のある患者や、H. pylori除菌治療歴のある患者は除外された。 被験者は、H. pylori除菌治療を行う群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。H. pylori除菌治療は、ランソプラゾール(プロトンポンプ阻害薬)30mg+アモキシシリン1,000mg+クラリスロマイシン500mgが、1日2回、7日間投与された。 主要アウトカムは胃がんの発生とした。事前に規定された副次アウトカムは、追跡期間中のH. pylori除菌の状況別の胃がんの発生であった。胃がんリスクが55%、除菌達成例では73%低下 1,838例が無作為化の対象となり、除菌治療群に917例(平均年齢48.8±6.0歳、男性49.9%)、プラセボ群には921例(48.8±6.3歳、49.1%)が割り付けられた。1,676例(修正ITT集団、除菌治療群832例、プラセボ群844例)が主要アウトカムの解析に含まれた。主要アウトカム評価の追跡期間中央値は9.2年(IQR:6.2~10.6)、全生存率評価の追跡期間中央値は10.2年(8.9~11.6)だった。 胃がんは、除菌治療群が832例中10例(1.2%)で発生し、プラセボ群の844例中23例(2.7%)と比較して、頻度が有意に低かった(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.21~0.94、log-rank検定のp=0.03)。試験期間中に、1例の胃がんの予防に要する治療必要数(NNT)は65.7(95%CI:35.1~503.8)であった。胃がん発生例33例のうち、30例(90.9%)がStageI、3例(9.1%)はStageIIだった。 H. pylori除菌の状況別の胃がんの発生は、1,587例(H. pylori除菌達成例608例、持続感染例979例)で評価が可能であった。胃がんは、H. pylori除菌達成例が608例中5例(0.8%)で発生し、持続感染例の979例中28例(2.9%)に比べ、頻度が有意に低かった(HR:0.27、95%CI:0.10~0.70)。胃がんが発生した除菌治療群の10例のうち、5例(50.0%)にH. pyloriの持続感染が認められた。持続感染例では、除菌治療群とプラセボ群で胃がんの発生は類似していた。 除菌治療群の917例中16例(1.7%)およびプラセボ群の921例中18例(2.0%)が死亡し、全生存率に関して両群間に有意な差はなかった。また、胃がんによる死亡はみられなかった。 薬剤関連有害事象は全般に軽度であり、頻度は除菌治療群がプラセボ群よりも高かった(53.0% vs.19.1%、p<0.001)。除菌治療群で多い有害事象は、味覚変化(32.3% vs.3.5%、p<0.001)、悪心(6.6% vs.3.2%、p=0.001)、下痢(22.3% vs.6.1%、p<0.001)、腹痛(4.6% vs.0.9%、p<0.001)であり、有意差はないが消化不良(7.9% vs.6.1%)の頻度も高かった。 著者は、「本試験の結果からは、除菌が達成されなかった患者の胃がんリスクは、除菌治療群とプラセボ群で同様と考えられる。したがって、これらのデータは、test-treat-testアプローチ(検査の適応があり、検査結果が陽性の者は誰もが治療を受けるべきで、治療終了後は検査で除菌を確認)が推奨するように、除菌成功の確認の必要性を強調するものである」としている。

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進行非小細胞肺がんへの初回治療としての免疫治療薬併用療法について(解説:小林英夫氏)-1176

 2018年のノーベル医学賞を受賞された本庶 佑博士が発信されたがん免疫療法は、実地臨床でも急速に普及している。肺がん治療の柱は、手術療法、化学療法(殺細胞性抗悪性腫瘍薬)、放射線療法、さらに1990年代以降に加わった分子標的治療薬の4者が基本である。この分子標的治療薬の中でも腫瘍細胞が宿主免疫機構から逃避する機序を阻害する、そして本来有している免疫応答機能を回復・保持する治療薬が免疫チェックポイント阻害薬(がん免疫療法)である。治療の4本柱をどのように使い分けるか、またどう組み合わせれば治療効果をより高めるかについて、これまでもそして現在も精力的な検討がなされている。 本論文はがん免疫療法薬の中から、抗PD-1(programmed cell death 1、プログラム細胞死1)抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)と、抗CTLA-4(cytotoxic T lymphocyte antigen 4、細胞傷害性Tリンパ球抗原4)抗体であるイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用効果を検討している。両者の併用は他の悪性腫瘍に有効であることがすでに報告されている。結果は、進行非小細胞肺がんの初回治療としてニボルマブ+イピリムマブ併用群は、白金製剤を主とした化学療法群よりもOS(overall survival、全生存率)が優れることが確認された。ただ、本論文は大規模研究(CheckMate-227)のpart 1報告であるため、設定した対象群や方法のすべてが結果章で記載されておらず、やや消化不良な側面もある。また本報告の要約は、「ニボルマブ+低用量イピリムマブ、NSCLCのOS有意に改善(CheckMate-227)/ESMO2019」(2019年10月22日配信)でもう少し詳しく掲載されている。 本結果の最大の注目点はPD-L1発現レベルの多寡を問わず、化学療法よりも免疫療法併用群が臨床的に意味のあるOS改善を示したことにある。すなわち、有効性を期待できる症例が大きく増加する可能性が示唆されたことが大きな成果であろう。そして、免疫療法薬同士にとどまらず、他の治療法との組み合わせも含めて肺がん治療はまだまだ発展が期待できる。 ちなみに、本研究には日本のデータも含まれているが、現時点では本邦におけるヤーボイは肺がんへの適応は未取得であり、これからの追加取得が待ち遠しい。

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BRCA変異陽性膵臓がんにオラパリブを承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2019年12月27日、プラチナベースの1次治療化学療法レジメンで16週間以上疾患が進行しなかった生殖細胞系列BRCA(gBRCA)変異陽性の転移を有する膵臓がんの成人患者の維持療法として、オラパリブ(商品名:リムパーザ)を承認した。オラパリブのPFS中央値は7.4ヵ月、プラセボは3.8ヵ月 FDAはまた、コンパニオン診断として、BRACAnalysis CDxテスト(Myriad Genetic Laboratories、Inc.)も承認した。 オラパリブの有効性は、転移を有するgBRCA変異膵腺がん患者154例においてオラパリブとプラセボを比較した多施設二重盲検無作為化プラセボ対照試験POLOで検討された。 主要有効性評価項目は、盲検独立中央委員会による無増悪生存期間(PFS)、追加の有効性評価項目は、全生存期間(OS)および全奏効率(ORR)であった。 PFS中央値は、オラパリブ投与患者7.4ヵ月、プラセボ投与患者では3.8ヵ月であった(HR:0.53、95%CI:0.35~0.81、p=0.0035)。OS中央値は、オラパリブおよびプラセボで18.9ヵ月および18.1ヵ月であった(HR:0.91、95%CI:0.56~1.46、p=0.683)。ORRは23%および12%であった。 POLO試験で観察されたオラパリブの一般的な副作用は既報のものと一致していた。10%以上の項目は、悪心、疲労、嘔吐、腹痛、貧血、下痢、めまい、好中球減少症、白血球減少症、鼻咽頭炎/上気道感染症/インフルエンザ、気道感染症、関節痛/筋肉痛、味覚障害、頭痛、消化不良、食欲減退、便秘、口内炎、呼吸困難、血小板減少であった。

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HER2陽性乳がんの延長アジュバントにneratinib承認

 米国食品医薬品局(FDA)は2017年7月17日、早期のHER2陽性乳がんの長期アジュバント治療に、pan-HERチロシンキナーゼ阻害薬neratinibを承認した。neratinib治療は、この対象患者で初となる延長アジュバント療法であり、がんの再発リスクをさらに下げるため初回治療後に行われる。neratinibの適応患者はトラスツズマブレジメンの既治療患者である。 今回の承認は、第III相ExteNET 試験と、第II相CONTROL 試験の結果に基づくもの。ExteNET 試験の初回解析では、2年間の無浸潤無病生存率(iDFS)は、neratinib治療患者では94.2%、プラセボ患者では91.9%であった(HR:066、95% CI:0.49-0.90、p=0.008)。 neratinibの安全性と有効性は、過去2年間にトラスツズマブで治療を完了した早期HER2陽性乳がん患者2,840例の無作為化試験で研究された。neratinibの主な副作用は、下痢、悪心、腹痛、疲労感、嘔吐、皮疹、口内炎、食欲不振、筋痙攣、消化不良、肝障害(ASTまたはALT上昇)、爪障害、乾燥皮膚、腹部膨満、体重減少、尿路感染症であった。 国立がん研究所(NCI)は、本年、米国では約25万人の女性が乳がんと診断され、4万人が乳がんにより死亡すると推定している。また、HER2陽性患者は乳がんの約15%である。■参考FDAニュースリリース

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幸せになる勇気【Dr. 中島の 新・徒然草】(128)

百二十八の段 幸せになる勇気「幸せになる勇気」(岸見一郎ほか、ダイヤモンド社)とは、いささかヒネリの効きすぎたタイトルの本ですが、とあるミュージシャンのブログで絶賛されていたので、早速読んでみました。Kindle版もあるので、興味を持ったら即座にダウンロードできます。著者である岸見一郎氏はアドラー研究者として有名です。アルフレッド・アドラーは1870年生まれのオーストリアの精神科医で、フロイトやユングと並び称される心理学の三大巨頭と言われています。この本は、アドラー心理学に基づいて教育や結婚生活を中心に「いかに幸せになるか」という人類永遠のテーマを説いたものです。哲人と青年教師との対話形式なので大変読みやすく、実際、読みだしたら止まらなくなってしまいました。私も職員研修部長として、初期研修医の教育には心を砕いているのですが、考えさせられるところが多かったので、そのごく一部をかいつまんで紹介させていただきます。まずは教育の目的とは何か、ということです。われわれのところの臨床研修指導医講習会では、「教育とは学習者の行動に価値ある変化をもたらすもの」としています。これはこれで模範的な答えです。「幸せになる勇気」に登場する哲人によれば、教育の目的は「生徒の自立」だそうです。ちょっとわかりにくい答えです。そもそも「自立」とは何でしょうか?それは「わたし」の価値を自分で決定することだとされています。つまり、教師に褒められたり周囲に感心されたりなど、他者からの承認を求めるのではなく、自らの意思で、自らを承認するのです。哲人によれば、他者からの承認を欲するのはただの「依存」であり、「普通であることの勇気」が足りていないということになります。平凡な自分を、「その他大勢」としての自分を、そのまま受け入れることが大切なのだそうです。そして、教育とは介入ではなく、生徒の自立に向けた援助ということになります。ただのお手伝いですね。その結果、自立に至った生徒たちは、自らの力でそれを成し遂げたと感じます。教育者が「先生のお蔭で卒業できました」と本気で言われたりしたら、言った生徒はまだ自立に至っていないことになります。必然的に教育者は孤独な存在にならざるを得ません。生徒からの感謝を期待してはならず、生徒の自立という大きな目標に自分は貢献できたのだ、という貢献感の中に幸せを見出すしかないのだとか。「幸せになる勇気」は大変面白い本ではあるのですが、世間の常識に逆行する考え方も多いので、私もまだ自分の中で消化することができていません。アドラーの理論は、何よりも実践が大切だということなので、これからいろいろ試行錯誤してみます。職場での研修医教育や、家庭での子育てに関わっておられる読者の皆さまにとっても、一読する価値は十分にあると思います。よかったら読んでみてください。ということで、消化不良ながら最後に1句自立して 普通の自分を 承認だ

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標準対強化禁煙薬物治療の初ガチンコ。非盲検比較試験結果によると禁煙率は同等!(解説:島田 俊夫 氏)-482

禁煙薬物標準治療と強化治療の禁煙率は同等 深刻な喫煙による健康被害のために、薬物治療を徹底的に比較評価することは禁煙率改善上重要である。2016年1月26日発行のJAMA誌に掲載された米国・ウイスコンシン大学公衆衛生学部門のTimothy B. Baker氏らは、禁煙治療に関心を持つ成人に対して、ニコチンパッチ、バレニクリン、併用ニコチン代替治療(C-NRT:ニコチンパッチ+ニコチントローチ)を使って12週間薬物治療後、26週、52週後の禁煙率を生化学的検査により裏付けた結果から評価し、3群間に有意差は認めなかったと報告した。禁煙薬物治療初ガチンコの非盲検無作為化比較試験 ニコチンパッチ単独を除く、2種類の禁煙強化薬物治療、C-NRTとバレニクリンによる禁煙強化療法が、標準治療より優れているようにみられてきた。バレニクリン治療とC-NRTは費用面、処方の必要性、およびスクリーニングと継続モニタリングの強さの点で異なっている。そこで、米国ウイスコンシン州マジソンとミルウォーキーの喫煙者1,086例を対象に非盲検無作為化臨床試験を実施した。喫煙者は12週間禁煙薬物治療を受けるため、3群中のいずれかの群に非盲検でランダムに割り付けられた。(1)ニコチンパッチ単独群(n=241)、(2)バレニクリン単独群(n=424)、(3)C-NRT群(n=421)。 この期間に6回のカウンセリングが実施され、主要評価項目は呼気一酸化炭素濃度測定により裏付けられた自己申告7日間禁煙率、副次評価項目は自己申告による初回禁煙、26週後の禁煙維持率、4、12、52週時点での7日間禁煙率とした。 26週での禁煙率はニコチンパッチ群23%、バレニクリン群24%、C-NRT群27%、また52週での禁煙率はニコチンパッチ群21%、バレニクリン群19%、 C-NRT群20%で、いずれの群間においても有意差は認めなかった。研究対象となった薬物治療は、すべて忍容性の高い治療薬であったが、バレニクリン治療はニコチンパッチ治療に比べて、鮮明な夢、不眠、嘔気、便秘、眠気、および消化不良といった有害事象をより多く引き起こした。本研究からのメッセージ 本研究は、バレニクリン治療とC-NRT薬物治療法を最初に直接比較した研究であり、研究の持つ意義は大きい。著者らは薬物投与終了後26週、52週での禁煙評価項目のいずれにおいても、これら3群間薬物治療に有意差を認めず、これまでの禁煙強化療法の優位性に関して疑問を投じた。本研究は、禁煙強化療法の優位性をうのみにせず、また否定することなく真実を明らかにすることの必要性について言及している。

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禁煙のための薬物療法、長期効果は同等/JAMA

 禁煙を希望する喫煙成人において、ニコチンパッチ、バレニクリン、ニコチンパッチ+ニコチントローチのいずれの介入も長期の禁煙効果は同等であることが、米国・ウィスコンシン大学のTimothy B. Baker氏らが1,086例を対象に行った非盲検無作為化試験の結果、示された。12週間治療を行い、26週、52週間後の禁煙率を生化学的検査で調べたが、その値に有意差は認められなかったという。著者は、「今回の結果は、禁煙治療の薬物強化療法に関する相対的な効果について疑問を呈するものであった」と述べている。JAMA誌2016年1月26日号掲載の報告。26週後の7日間禁煙率を比較 研究グループは、2012年5月~15年11月にかけて、米国・ウィスコンシン州マジソンとミルウォーキーで、喫煙者1,086例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、ニコチンパッチのみ(241例)、バレニクリンのみ(424例)、ニコチンパッチ+ニコチントローチ(C-NRT群、421例)を、それぞれ12週間投与した。全被験者に対し、6回のカウンセリングを行った。 主要評価項目は、26週後の自己報告による7日間禁煙率で、呼気一酸化炭素濃度により確認した。副次評価項目は、自己報告による初回禁煙と26週後の禁煙持続率、4、12、52週時点における7日間禁煙率だった。26週、52週の7日間喫煙率、いずれの群も同等 被験者のうち女性は52%、平均年齢は48歳、平均喫煙量は17本/日だった。被験者のうち12ヵ月時点で追跡データが得られたのは917例(84%)だった。 結果、26週後の7日間禁煙率は、ニコチンパッチ群が22.8%、バレニクリン群が23.6%、C-NRT群が26.8%で、有意な差はみられなかった。また、52週時点の7日間禁煙率も、それぞれ20.8%、19.1%、20.2%と同等だった。 26週後の禁煙維持に関する群間リスク差も、ニコチンパッチ群 vs.バレニクリン群が-0.76%、ニコチンパッチ群 vs.C-NRT群が-4.0%、バレニクリン群 vs.C-NRT群が-3.3%で有意差は認められなかった。 なお、いずれの薬剤も忍容性は良好だったが、バレニクリン群で明晰夢や不眠、吐き気、便秘、眠気、消化不良といった副作用の発生頻度が高かった。

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2つのADHD治療薬、安全性の違いは

 英国・サウサンプトン大学のSamuele Cortese氏らは、注意欠如・多動症(ADHD)児におけるメチルフェニデートとアトモキセチンの有害事象(AE)発現状況を比較検討した。その結果、アトモキセチンはメチルフェニデートに比べ、軽度AEおよび重度AEとも有意に高頻度であることを報告した。CNS Drugs誌オンライン版2015年8月21日号の掲載報告。 研究グループは、大規模自然主義的研究において、メチルフェニデートまたはアトモキセチンによる治療を5年以上行っているADHD児の、有害事象(AE)の種類と頻度を評価した。イタリア・ADHD登録(90施設を網羅するADHD治療薬の市販後第IV相医薬品安全性監視の国家的データベース)よりデータを取得。AEは、Italian Medicines Agencyの分類に従い、重度または軽度に分類した。2つの治療群間のAE発現頻度を、100人年当たりの発生率(IR100PY)および罹患率比(IRR)により比較した。精神疾患の併発を調整するため、Mantel-Haenszel法で補正してIRRを算出した。 主な結果は以下のとおり。・2007~2012年に、メチルフェニデートによる治療を受けた患者は計1,350例、アトモキセチンによる治療を受けた患者は計753例であった(年齢6~18歳、平均年齢10.7±2.8歳)。・90例(7%)がメチルフェニデートからアトモキセチンに変更、138例(18%)がアトモキセチンからメチルフェニデートに変更していた。・アトモキセチンによる治療を受けた小児37例、およびメチルフェニデートによる治療を受けた12例が服用を中断していた。・全体で1件以上の軽度AE(両薬剤において食欲減退、興奮性など)を認めた患者は645例(26.8%)、1件以上の重度AE(重篤な消化器イベントなど)を認めた患者は95例(3.9%)であった。・IR100PYは、軽度および重度AEの件数、ならびにすべてのAEについて、メチルフェニデート群に比べアトモキセチン群のほうが有意に高かった。・併存疾患で調整後のIRRも、軽度AE(食欲減退、体重減少、腹痛、消化不良、胃痛、興奮性、気分障害、めまい)および重度AE(消化器系、精神神経系、心血管系)共に、メチルフェニデート群に比べアトモキセチン群で有意に高かった。 ・本自然主義的研究において、メチルフェニデートはアトモキセチンに比べ良好な安全性プロファイルを示した。関連医療ニュース 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係 メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる ADHDに対するメチルフェニデートの評価は  担当者へのご意見箱はこちら

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胃食道逆流症の症状

胃食道逆流症であらわれる症状はさまざまです睡眠障害耳痛、中耳炎どん さん呑酸虫歯(酸っぱいものがのどまで上がってくる感じ)のどの違和感・つかえ感声のかすれ胸やけ慢性の咳(前胸部が下から上に向かって熱く焼けるような感じ)喘息症状胸痛胸のつかえ感げっぷ、吐き気胃もたれ上腹部痛監修:島根大学医学部第2内科 教授Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.木下 芳一氏

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